今年度は数年ぶりに来年小学校に入学予定の保護者を対象とした就学前健診時の子育て講座を3件ほど担当しました。
と書きはじめましたが、第一子が年長前の場合は就学前健診って言われてもよく分からないですよね。
ということで、そんなママ・パパのために、先ずは「就学前健康診断」について簡単に説明します。
就学前健康診断とは
(内科・眼科・歯科等)
受診する場所:住所ごとに指定された学区内の小学校で受診します。
指定された場所以外では受診できないため、私立など学区外への進学を予定しているお子さんも、基本的には学区内の小学校で受診することになります。
所要時間:受付なども含めて約2〜3時間。
やり方:子ども達はグループごとに分けられ、グループを担当する先生や小学生のお兄さんお姉さんの指示に従って教室をめぐり各種健診を受けます。
お子さんが健診を行っている間、保護者は学校からの連絡や子育て講座などを聞いて子ども達の帰りを体育館などで待つことになります。
なんとなくイメージがつかめたでしょうか。
この就学前健診の通知が届くと、「あ~我が子ももうすぐ小学生か~」と実感する人も多いでしょう。
そんな、お子さんが健康診断を受けている間に聞く子育て講座を担当したわけですが、今年度、生駒がお伝えした子育て講座のタイトルがこちら
小学校入学前に知っておきたい親も子も楽になるコミュニケーションのお話し
講座では、子育ての目安「三つのめばえ」をご紹介したあと、生駒が子育て講座を担当するならこれでしょ!ということで、「親業」の中から「子どもの話の聞き方」を(学校によってはロールプレイで)お伝えしています。
小学校入学前に身につけたい子育ての目安「三つのめばえ」
講座の中では、子育ての目安「三つのめばえ」をご紹介しています。
これは、埼玉県が小学校就学前の子どもに身につけさせたい力として掲げているものです。
各地域によって似たものをだしているかもしれませんね。
埼玉県の多くの学校では、就学前健診時に子育ての目安「三つのめばえ」が保護者に配布されています。
一部お見せするとこんな感じ。
「生活」「他者との関係」「興味・関心」の三つの領域をはぐくむことで、それぞれ「自主性がめばえ」「社会性がめばえ」「学びへの意欲がめばえる」と謳っています。
ぜひ参考にしてほしいのですが…もしかするとこれを見て
「出来ないことが多い気がする…」
「うちの子小学校大丈夫かしら…」
と心配になった人もいるかもしれないですね!
うんうん、なかなか全部は出来ないですよ。
小学校入学までにこれが全部出来たとしたら、皆さんのお子さんは我が家の高校生の娘よりはるかに優秀です(笑)
埼玉県だって、就学前にこれを身につけてこい!と言っているわけではないんですよ。
ただ、親がこんなことを意識しているのと全くしていないのでは、やはりお子さんの「やってみよう!」という意欲も違ってきますからね。
とはいえ…
やっぱり、親としては気になることもありますよね…
●全部出来なくていいって言うけど、せめてあいさつくらいは…
●いやいや、小学校までに最低自分で起きるようにさせないと…ets
この「最低~くらいは」「~までにさせないと」の思考に取りつかれるとママの笑顔が減ってイライラガミガミが止まらなくなったりします。
「三つのめばえ」を知っていることは必要ですが
「三つのめばえ」が出来るようになることよりも、親子の関係を悪くさせないことの方が何倍も何倍も大切です。
子どもはガミガミ言われると不安になります。
想像してみてください。
大人だって、不安な時に新しいことを身につけるってすごく難しいと思いませんか。
子どもではなおさらです。
また、「三つのめばえ」は親だけが教えるものではありません。
子どもはすでに友達や先生、お祖父ちゃんお祖母ちゃんなどの影響も受けて育っています。
今後はさらに親以外の影響が大きくなっていくでしょう。
親が全部やらせなきゃと思わなくていいんですよ。
むしろ、小学校入学までに子どもが出来なくたっていいよね~くらいに気楽に構えて、普段の生活の中で楽しみながら「三つのめばえ」に取り組んでみてくださいね。
基本的には、本人が身につけようと思えたタイミングで出来るようになっていくものです。
不安なのかな…と感じたら、子供の話の聞き方
そして、講座の後半では子どもが安心してやる気を出せる!そんな親子の良い関係を後押しする「子どもの話の聞き方」をお伝えしました。
あなたもどこかでこんな言葉を聞いたことがあると思います。
でも現実は…
みんな意外と聞けてないんだな~と思っていいですよ。
ただ現状は、聞けていないというより、聞く気はあっても、聞き方を知らないがために聞けていない人が多いという感じでしょうか。
今回の子育て講座では、まずは、親は聞いているつもりでも子どもにとっては「聞いてもらったと思えない対応」を身近な事例でご紹介しました。
それがこちら
(例)親子で子育て支援センターに遊びにきたあなたは、子どもに「帰るよ」と声をかけました。
すると子どもが…
「まだ帰りたくない!」
と、愚図っておもちゃを投げました。
さあ、あなたならどんな声をかけますか?
例えば、こんな声掛けしていませんか?
(1)命令「おもちゃは投げないの! 」「ほら帰るよ!早く来なさい!」
(2)脅迫「おもちゃを投げるんだったらもう遊びに来ないよ! 」
(3)説教「おもちゃは投げるものじゃないよね。お友達に当たって怪我でもしたら大変だよ」
(4)提案「家のおもちゃで遊べばいいじゃない」
(5)講義「帰りたくないのは分かるけど、物を投げたって仕方ないでしょ」
(6)非難「気に入らないとすぐに物を投げるよね!本当わがまま! 」
(7)同意・賞賛「 ○○ちゃんらしくないね。いつもはママの言うことを聞く良い子なのに」
(8)侮辱「何やってるの!馬鹿じゃないの!ママそういうの大嫌い! 」
(9)分析「愚図ればまだ遊べると思って!」「あっそれか眠いんでしょ。 」
(10)同情・激励「おうちにもおもちゃいっぱいあるから頑張っておうち帰ろう! 」
(11)尋問・質問 「どうして投げるの?」「壊れたらどうするの? 」
(12)ごまかし「おもちゃさんが痛い痛いって言ってるよ」
参考:「親業」トマス・ゴードン著より
これは、親業ではお決まりの12の型と言われるメッセージです。
子どもが困っていたり不安だったり、イライラしてたり悲しかったり。
そんな子どもが問題を抱えているときに言われても聞いてもらった気がしない対応を12個に分けています。
子どもは不安な時、こんな風に言われると親の言うことを聞くどころか、愚図ったり反抗したりしたくなっちゃうんです。
でもどうでしょう。
一見するとよく言うセリフのようにも感じますよね。
これ、子どもが問題を抱えていなくて、親子が良い時間を過ごしているときにには全く問題のメッセージなんです。
でも、ひとたび子どもが問題を抱えた時に言ってしまうと子どもをイライラさせたり不安にさせてしまうんです。
では、なぜお決まりの12の型が聞いてもらった気がしないのか?
それは
お決まりの12の型が全部、親の意見だからです。
聞いているつもりが、無意識に親の意見を押し付けていたというわけです!
参考
子共の話の聞き方
じゃあどうやって聞けばいいのか。
子育て講座では、「子どもの話しの聞き方」をキャッチボールに例えながら分かりやすくお伝えしています。
先ずは、お決まりの12の型をキャッチボールで例えるとこんな感じ。
まだ帰りたくない!
と言った子どもが投げた青いボールに対して
紫とか赤とか
子どもが投げた青いボールとは違う、別のボールを投げまくること。
「僕の投げたのはそれじゃないよー」
「お母さん分かってくれないな…」
と子どもは抵抗するわけです。
じゃあ、子どもの話を聞くにはどうしたらいいのかというと
まだ帰りたくない!と投げられた青いボールに対して
先ずは、親の意見を言わずに黙って聞く。
あいづちを打ちながら聞くのも良いでしょう。
子どもは「話してもいいんだ」と安心します。
「どうしたの?」「話してごらん」などと促してみると、さらに話しやすくなります。
でも…これだけだと
「お母さん、本当に分かってくれたのかな…」
と子どもはまだ不安です。
また、親が「この子はこう感じているね」「これが言いたいのね」「これがしたいのね」と心の中で理解したつもりでいても、本当にそれが子どもが理解してほしい事かは分かりません。
実際、子どもが感じていることや理解してほしいことと、親の理解とが違うことも少なくありません。
だったら、親の理解が「これでいいのか」を子どもに確かめてみればいいわけです!
こんな風に
「あなたの投げたボールはこの色であっていますか?」
と、同じ青いボールを投げかえしてみることです。
もしそのボールが自分が投げた色と同じだったら、子どもは親が本当に分かってくれたことを確信するでしょう。
そして、親も自分の理解が正しいかどうかが確認できます。
さあ、キャッチボールを使った「子どもの話の聞き方」はいかがでしたでしょうか。
ぜひ参考にしてみてください。
実際の子育て講座では、話を聞いてもらった子どもの頭の中ではどんな変化がおこっているのかなんてこともさらっとお伝えしています。
参考
就学前健診でお伺いした小学校
最後に、今回就学前健診の子育て講座にお伺いした埼玉県の小学校をご紹介します。
●上尾市立富士見小学校(保護者で80名ほど)
●戸田市立戸田南小学校(保護者150人ほど)
●日高市立高根小学校(保護者20名ほど)
上尾市立富士見小学校はバリアフリーデザインで上尾市で一番人気のある小学校と言われているそうです。
なんと!世界時計が校舎にありましたー
戸田市立戸田南小学校は学校にしては珍しく駅からかなり近い学校です。
この少子化に時代にあっても、まだまだ児童が増えているそうです。
日高市立高根小学校はのどかな住宅街の奥にある高台の学校です。
先生方が温かかくて、子ども達も元気いっぱい!
なんとなく私の実家(愛知県瀬戸市)に似ている気がして、街を歩いていても楽しかったです。
こんな親近感のある高根小学校ですが、日高市は少子高齢化による人口減少を見据え、現在、公共施設の再編真っ最中。
令和7年までには、高根小学校と高根中学校が統合されるそうです。
この感じだと、統合後も子ども達がのびのび出来る住みやすい街になりそうな予感がします。
参考
今回の就学前健康診断で心に残っていること
最後に、今回の就学前健診で心に残っていることをふたつご紹介します。
ひとつめは
ビックリしたけど嬉しかった話し。
今回お伺いした戸田南小学校と高根小学校は地理的にかなり離れているのですが…なんと!
高根小学校の講座の帰り道に高麗川駅から電車に乗って川越駅で降りたホームのところで
「生駒先生ですか?」
とこえをかけられ、振り向いたら可愛い女性が。
「わたし、昨日の戸田南小にいたんです」と!
まさか!こんな全然違う場所でそんな出会いがあるなんてー!
時間がなくてゆっくり話せなかったけれど、別れ際、満面の笑顔で
「お話を聞いて頑張ろうと思いましたー」
と言ってくれました。
伝えたいことが届いていてよかったー(じーん)
本当に嬉しかったです。
そしてもう一つ心に残ったのが
富士見小学校の校長先生の言葉。
それは、講座後の校長室での会話の中でした。
参加された保護者の方が子育て講座をとても集中して聴いていたこと、ロールプレイの際には、いきなり指名されたにも関わらず、指名された保護者全員がとても協力的だったことなどを話していたとき。
校長先生がこんな風におっしゃいました。
今回の子育て講座を見ていて、ちゃんと話せばしっかり聞いてくれる保護者の皆さまだということが分かったことが本当に収穫でした。
褒められているのはもちろん保護者です^^
でも、そこに関わったわたしもなんだか誇らしい気持ちになりました。
以上心に残ったことふたつ。
ちょっと報告と思ったら長々と書いてしましましたが、いっその事、来年度は膨大な数の就学前健診の子育て講座をあえて引き受けちゃおうかな!と思うくらい、今年、就学前健康診断の子育て講座を引き受けて良かったと思っています。
来年入学予定の子ども達、そして保護者の皆さまに幸あれ。