子どもを信じられないという親たち
筆者は、対面やオンラインでさまざまな年代のお子さんをお持ちの親御さんの親子関係改善のサポートをしています。
そんな中で、特にお子さんが小学生以上の親御さんからこんな言葉をよく聞きます。
「子どもを信じられないんです」
子どもを信じることが出来ないのには理由がある
「子どもが信じられない」と悩む親御さんは少なくありません。
もちろん最初から「こいつは信用できない!」と思っていたわけではなく、子どもを信じられないのには理由があります。
「ゲームしたら宿題やる」って約束したのにやらない
「明日は学校に行く」って言ったのに行かない
(「行く行く詐欺」)
すぐばれる嘘をつく!
その他、日ごろの生活態度や趣味、時間やお金の使い方など、当たり前のことを何度注意してもアドバイスしてもちっとも変わらない!
そんなことが重なると「裏切られた!許せない!」という感情が湧き上がり
「子どもを信じられない!」言いたくなるものです。
他人であれば、「こいつは信用できないから関わらない!以上!」で済むのですが……我が子の場合はそうはいきません。
我が子だからこそ、裏切られたときの絶望感が大きいうえに、「今までやってきたことは何だったの!」という徒労感、「わたしの接し方が悪かったの!?」という自責の念にかられてしんどいものです。
実は、こうした状況というのは、信じてもらえない子どもはもちろんですが、信じてあげられない親の精神的影響も大きく、普段の生活や人格形成にも影響を及ぼします。
子どもを信じない親の特徴
以下は、「子どもが信じられない」と悩む親御さんにありがちな特徴です。
あなたに当てはまるものはありますか?
感情表現が乏しい
楽しいときでもあまり笑わない、怒っているときも怒った表情を見せないなど、声のトーンやテンションの変化が少なくまります。
子どもを信じられない親の心は常に疑心暗鬼、不安や怒りのジェットコースター。
そのため、自分がこれ以上傷つかないように、子どもを見下したり反応しないことで自分を守っているとも言えます。
しかしそうすることで、反対に親の劣等感は強まり、自己肯定感を下げることにもつながります。
精神的につかれやすい
常にストレスにさらされた状態のため、自律神経のバランスが崩れ疲れを感じやすくなっています。
「やる気がでない」「なんとなく不安」「イライラする」などの気分の変化からはじまり、胃痛や不眠、下痢、肩こりなどの身体的不調も現れます。
ひどくなると、うつ病などの精神的な病気につながっていくこともあります。
人と会うのが億劫
「人と会いたくない」「1人で過ごしたい」など、他人との関わりを避けるようになります。
子どもが信じられないことによる不安や怒りは心に大きなストレスを与えます。
常態化したストレスは心のエネルギーを消耗させ常に緊張状態。
たとえ楽しいシチュエーションであっても、人と関わることで余計に疲れをためることになります。
人を試す行動をとる
真意を確かめるために、子どもを試すような行動をとるようになります。
本当は続けてほしいのに「やめれば」とわざと冷たい態度をとったり、遠回しな質問で困らせたりして反応を伺います。
小さな子どもが、親の気を引こうと嘘をついたり駄々をこねる「試し行動」に似ていますが、それに加え、「子どもから傷つけられないように」「先に攻撃して自分を守ろう」とする自己防衛本能が働くため上から目線になりやすいようです。
子どもを信じない私は親失格!?
「子どもが信じられない親」の特徴はいかがでしたでしょうか。
こんな親にはなりたくないと思った人は多いと思うのですが、そもそも
「子どもを信じられない」のはダメなことなのでしょうか?
結論から言うと、子どもが信じられなくても大丈夫。
むしろ、「明日は学校に行く」「次はやる」と言ったのに、何度も約束を破る子どもの言葉が信用できないのは当たり前です。
親がそうした姿勢を示し続けることで、子どもは例え失敗しても「大丈夫!」「自分はダメなんかじゃない」「ありのままの自分には価値がある」、そう思えて安心して次のチャレンジにも向かえるのですから。
子供を信用出来なくていい、でも「信頼」を寄せよう
「子どもが信じられない」と嘆く人は、子どもを「信用」の尺度でのみ評価判断していることが多いです。
でも、
子育てで大切なことは「信用」だけではなく「信頼」を寄せることです。
「信用」と「信頼」の違い
「信用」と「信頼」は似ているようで大きく違います。
子育てにおける「信用とは」
信用……過去の実績や成果に対する評価にもとづく期待
「新語時事用語辞典」より
子どもが「親の期待通りに行動したか、結果を出したか」を親が評価・判断します。
「親の期待通りの行動、または結果を出したら信じてあげる」
「親がやってほしくない行動、結果なら、私はあなたを信じません」
という条件付きの愛とも言えます。
子育てにおける「信頼とは」
信頼……相手の人格や相手が自分に対してもつ感情についての評価にもとづく期待
信頼の構造: 山岸 俊男 (著)
「親が自分をどう感じているか」を子どもが評価・判断します。
「この親は本当に自分を傷つけないか」
「詐取しないか」
「自分のことが本当に好きか」
「本当に信じていいのか」
子どもは、親からの信頼を感じることで、親に対しても言葉や態度で「信頼」を返すようになります。
親は、この子どもからの「信頼」を受けとったとき、「子どもを信じられる」と実感することでしょう。
こうして親と子が相互で信頼を積み重ねることで、親子の信頼関係はより強固になっていきます。
「信頼」とは「愛情」と同意。
見返りを求めない無償の愛なのかもしれません。
親が「信頼」を寄せることからはじめよう
さて、ここまで「信用」と「信頼」の違いをお伝えしてきましたが、間違えてはいけないのが「信頼」することは「なんでも許す」ことではないということです。
「これは信用できない!任せられない!」と思えば、任せられない旨を子どもを非難しない形で伝えていくことも必要です。
もちろん、それによって子どもが怒ったり、不機嫌になることもあるでしょう。
そうなった時こそ、「この子ならこの感情を乗り越えられる!」と「信頼」して子どもを見守るよう心がけてみてください。
子どもが「信用」出来なくてもいい
まずは、子どもに「信頼」を寄せることからはじめていきましょう。
子どもを信じられる親になるために
ここからは、子どもを信じられる親になるために出来ることをご紹介します。
今のあなたに必要なものがあればぜひ取り入れてみてください。
自分をもっと大切にする
「子どもが信じられない」親は、子どもに振り回されのに慣れてしまい、自分を大切にすることが出来ていません。
反対に、「自分を大切にしている人」というのは、自分が何がしたいのかが分かっていて、それに向かってイキイキと生活している人です。
ぜひ、一度ゆっくり自分自身と対話してみてください。
あなたは何が好きですか?
あなたは何がしたいですか?
誰か信頼できる友達やカウンセラーなどに話を聞いてもらうのもいいでしょう。
その他、自分を大切にするためにも、しっかり睡眠をとる、前向きになれる書籍を読む、軽い運動をするなど、心と体を整えることを心がけていきましょう。
期待しすぎない
「子どもが信じられない」親は、子どもに『こんな行動をしてほしい』という過度な期待を持ちがちです。
その分、思い通りにならないと分かった時のダメージが大きく、親も子も振り回されて疲れてしまします。
子どもへの過度な期待は控えましょう。
むしろ、最悪の事態を想定して備えておくくらいが、子どもに対しても自分に対しても穏やかにいられるでしょう。
親と子は別々の人間なんだと肝に銘じる
「子どもが信じられない」親は、「自分の子ども」を「自分の一部」として捉え、子どもの問題を親が解決しようと乗り出します。
しかし、子どもの問題を親が奪ってばかりいると、いつまでたっても子どもを信じることは出来ません。
子どもを信じるためにも、「自分と子どもは別々の人間なんだ」という自他分離の考え方を繰り返し胸に刻んでいきましょう。
コミュニケーション(接し方)を変える
「子どもを信じられる親になるために出来ること」の最後は、コミュニケーション(接し方)変えること。
ここからあなたは、子どもに「信頼(愛)」を伝えていくことでしょう。
では、どんな態度、どんな言葉で信頼(愛)を伝えますか?
もちろん無二の正解はなく、何を選ぶかはあなたに任されています。
ただ、たとえあなたが「信頼」を示したつもりでも、あなたの言葉や態度が「愛」として伝わらなければ、子どもにとっては愛されていないのと一緒。
いつまでたっても子どもからの信頼が得られず、子どもを信じるてあげることが出来ないかもしれません。
コミュニケーション(接し方)とは、あなたの愛を、愛として伝えるための最大の武器。
ぜひ、あなたの愛が愛がとして伝わるように、今のコミュニケーション(接し方)を見直してみてください。
追伸:コミュニケーション(接し方)に迷ったら
コミュニケーション(接し方)を変えようとしても上手くいかない、いつのまにか自己流に戻ってしまう……そんなあなたには
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