親の学校子育てコラム
家に帰れない「帰宅拒否症」とは
誰でも、外で楽しい時間を過ごしていたり、家族と喧嘩して出かけた日などは「家に帰りたくない…」と思うこともあるでしょう。
また、仕事と子育ての忙しい毎日に、とにかく一人になりたいと叫びだしたくなるときもあるかもしれません。
でも、帰宅拒否症は上記とは少し様子が違います。
帰りたくないより「帰れない」
帰宅拒否症の人は、とにかく家にいても安心できず自分の居場所がないと感じています。
仕事が終わっても家族の待つ家に真っ直ぐ帰らず、必要のない残業をしたり、飲みに寄ったりカフェなどで時間をつぶすなどしてとにかくなかなか家に帰りません。
むしろ、終業時間が近づいてくると気が重くなり、家に帰ろうとすると頭痛など心身の不調が表れてくることもあります。
症状が進むと、家に帰りたくないというよりも「帰れなくなってしまう」というのが「帰宅拒否症」です。
帰宅拒否症とは人間関係(コミュニケーション)の問題
わたしは親子のコミュニケーションの講師をしていますが、やはり受講生さんの中にも「家に帰りたくない」とおっしゃる帰宅拒否症の方や、「旦那が家にいると落ち着かない」と話す方は増えています。
ある調査によると、全国の既婚男性329名に「帰宅恐怖症」について調査を実施したところ全体では10%、しかし、年代別でみると若い世代では約4人に1人が「帰宅恐怖症」で悩んでいるという結果も出ているとのこと。
いまや男性が家事も育児も主体的にやるのが当たり前!と言われる時代、若い世代に帰宅拒否症が多いというのは社会的に大きな問題です。
帰宅拒否症になってしまう原因
主に言われるのが夫婦の考え方のすれ違いです。
最近では女性活躍推進が進み、家事や育児の役割が変化しているにも関わらずうまく分担できていないことが要因とも言われていますが…
果たしてこれは分担の問題でしょうか?
いいえ、帰宅拒否症はコミュニケーションの問題です。
いくら家事育児の分担はを決めたとしても、コミュニケーションの質が悪ければ、話し合うこと自体困難ですし、一緒に居ればいるほどお互い傷つけ合い「帰宅拒否症」を増やしていくことになります。
結婚しても三分の一が離婚する現代、働く女性が増え、妻が精神的、経済的にも自立していく中で、このままでは今後も「帰宅拒否症」は増えていくでしょう。
そして、その夫婦の関係は子どもにも大きな影を落とします。
子ども達の未来のためにも、「帰宅拒否症」にならない、させないコミュニケーションを夫婦で実践していくことがとても大切です。
では、「帰宅拒否症」にならない、させないコミュニケーションとはどんなものでしょうか?
先ずは、帰宅拒否症にしてしまう人の特徴をみてみましょう。
「帰宅拒否症」にしてしまう妻(夫)の特徴
「帰宅拒否症」にしてしまう妻(夫)の特徴
・妻が夫の行動を監視したり、束縛したがる
・妻の気が強くて、夫が自分の感情や思いを表現できない関係になっている
・妻が何らかの被害者意識を持っていて、いつも愚痴を聞かされている
・妻がいつも朝から不機嫌である
・妻が家の中を片付けてくれない
・妻があまりにも子供優先である、子どもに夫の愚痴を話している
・妻と母親、または父親の関係が強く、いつも実家の意見に左右されている
(参考:カウンセリングオフィスAXIA HPより)
いかがですか? あなたのパートナー、またはあなた自身にこんな特徴はないでしょうか。
ちなみに、この帰宅拒否症にさせる妻(夫)の特徴は「モラハラ夫(妻)」や「子どもの考える力を奪う親」の特徴とほぼ一緒です。
「夫婦関係」「親子関係」に関わるトラブルに共通する特徴は基本的に同じ。
どの事象も、コミュニケーションの問題です。
アイメッセージを最初に提唱し、人間関係(コミュニケーション)講座をいくつも開発しているアメリカの臨床心理学トマス・ゴードン博士はこう言っています。
「対立は人間関係の真実の瞬間である。
対立が何度起こるかではなく、対立をどう解いたかでその後の人間関係が大きく変わる」
(参照/「親業」トマス・ゴードン著)
お互いの意見や価値観が違うこと(対立)は決して悪いことではありません。
ただ、その対立の解き方(コミュニケーション)が問題であり、それによって人間関係は大きく変わっていくというわけです。
以下は、そのトマス・ゴードン博士のコミュニケーションメソッドより、人と人との間でトラブル(対立)が起きた時、人間関係を壊してしまう人はどんな解決の仕方をしているかを二つの型に分けたものです。
帰宅拒否症に悩む皆さんのコミュニケーションを考える上で大いに参考になると思います。
そのコミュニケーション、負けられない戦いになっていませんか?
人間関係が上手くいかない人の99%の人が、以下の2つの解決法のどちらかをしていると言われています。
①「自分が勝ち、相手が負ける
トラブル(対立)が起こった場合、常に自分の解決策に相手を従わせる。
相手が抵抗すると、命令する、やりたいことをさせない等、あらゆる力を使って何としても従わせる。相手は表面上従うが、内心は不満と怒りが溜まっている。
②「自分が負け、相手が勝つ」
トラブル(対立)が起こった場合、常に相手の解決策に自分が従う。
本当はそうしたくないと思っていても、相手の抵抗が強いため苦々しくも譲ってしまう。
常に自分は相手に対し不満を募らせている。
そのため、相手を心底愛せない。
困っているときに親身になれなかったり、会社等で出掛けると清々し、帰宅時間になると憂鬱になったりする。
また、相手は一見自分のしたいことが出来ているようにみえますが、実は本当には受け入れてもらえていないことを感じているため、心は常に満たされない状態です。
上記2つの対応は、勝負あり法とも呼ばれ
名前の通り、特徴は
コミュニケーション=勝ち負け
になっているところです。
すべてではないですが、帰宅拒否症についての相談を受ける中の傾向としては、
帰宅拒否症にさせる妻(夫)が①の対応を、 帰宅拒否症になる夫(妻)が②の対応をしていることが多いです。
しかしながらどちらも、この2つのどちらかの方法で解決しようとし、どちらかしかないという思い込みとジレンマに苦しんでいる状態がみてとれます。
「雨降って地固まる」ということわざがあるように、トラブル(対立)が起きること自体は悪いことではありません。
ただ、トラブルのたびに関係が悪くなっているのであれば、解決の仕方が上記のような自分の正当性を示す負けられない戦いになっている可能性が大きいといえます。
では、「帰宅拒否症」にならない、させないためには、勝ち負けではないコミュニケーションとはどんなものでしょうか。
勝ち負けに変わる第三のコミュニケーション
勝ち負けではないコミュニケーションとは、ズバリ「話し合う」こと。
お互いの欲求を共有し、お互いの欲求を満たす解決策を一緒に探していくことです。
「質の良いコミュニケーション」とは、勝ち負けではなく話し合いの出来る関係なんです。
とてもシンプル。
でも、このシンプルな事がとてもとても難しい。
口では話し合いが大事!と言いながら…
「話し合い」=「どちらかの意見が通る」
という選択肢しか持ち合わせていない人。
話し合っているつもりが、感情が高ぶり思わず正当性を主張して負けられない戦いに入り込んでしまう人もいます。
仕事や友達との関係だと出来るのに…という人もいるでしょう。
このシンプルなことは、関係が近くなればなるほど相手への要求が増えて難しくなってきます。
本当は良い家庭を作りたい。
お互いを信頼し応援し合える関係が作りたい。
だからこそ、もっとこうすればいい!こうしたほうがいい!
こんなに考えているのにどうして分かってくれないの!
そんな、一番分かってほしい相手だからこそ、分かってもらえない思いが強くなって、相手に勝とうとしてしまうかもしれません。
でも、その相手に勝とうとするするコミュニケーションが、相手の心を家から遠ざけているとしたらもったいないことです。
帰宅拒否症はどちらかだけが悪いわけではありません。
お互いのコミュニケーションに対する認識のズレが大きな原因です。
うちの夫(妻)、「帰宅拒否症」かも…
自分は「帰宅拒否症」かも…と思ったら
先ずは自分のコミュニケーションが負けられない戦いになっていないか見直してみてください。
いつかあなたの家庭が、相手に要求する関係ではなく、お互いの欲求を共有し、お互いの欲求を満たす関係になれますように。
さいごに
具体的なコミュニケーションの方法を身につけたい方は親業訓練講座を受講するのがおすすめです。対立を解く第三の方法(話し合い)の仕方を含めたコミュニケーション原理原則が体験学習で学べますよ。
★親業訓練とは
★学ぶこと・効果
ちなみに、我が家の夫婦関係はモラハラ、帰宅拒否症を超えて現在はとてもいい関係となっています。
せっかく縁あって出会って築いた家族です。
コミュニケーションをあきらめないでほしいと願っています。
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