人育て 脳科学

脳科学まとめ<9歳~12歳編>小学校高学年の発達・できること・つけたい力

2022年3月14日

子育てが上手くいかないときに知りたい
脳科学まとめ
勉強も難しくなり、友達との関係も複雑になっていく小学校高学年。
子どものためを思いアドバイスや注意をしてみても、反抗的な言葉や態度が帰ってきて、親としては心配ながらも腹立たしくなるのもこの時期です。

ここでは、脳科学の視点から9歳~12歳の発達をお伝えしています。
第2次反抗期の入り口にさしかかった子ども達の成長を知ることで、親の心配は随分軽くなるはずです。
お子さんに接する際の参考にしてみてください。

 

12歳はゴールデンエイジ!神経系の発達期

9歳~12歳は、大人では何度も繰り返さないと出来ない難しい技や技術を即座に身につけてしまう「ゴールデンエイジ」と呼ばれる時期です。

キッズスポーツの世界ではよく聞かれるワードですが、決してスポーツに限ったことではありません。音楽や芸術、日常生活の様々な場面で新しいものを身につけるさいも同様です。

この時期についた技術や感性は、大人になっても忘れないと言われていますから、ぜひ様々なものにチャレンジしたいものです。



なぜこの時期にそんな能力が身につくの?


脳の部位にはそれぞれ役割があり機能を分担させています。

しかし、部位単体の機能や情報だけでは、体全体ではあまり効率よく機能してくれません。
そのため、脳は成長と共に各部位の神経細胞が他の部位の神経細胞とシナプスを介し神経回路を構築することで、脳の指令が体全体に効率よく届くようにしていくのです。

この神経回路は3歳ごろに大人の60%、6歳ごろに80%、10歳ごろには95%以上とほぼ大人と同じ回路が形成されるといわれています。


そのため、多くの神経回路が形成されるこの時期を「ゴールデンエイジ」と呼ぶのです。

また、このゴールデンエイジの前後は「プレゴールデンエイジ」「ポストゴールデンエイジ」などとも呼ばれます。

プレゴールデンエイジ
4歳~8歳

ゴールデンエイジ手前のこの時期は「運動の引き出し」が作られる小脳の発達期。
脳の指令を遂行するのに必要な「運動の引き出し」を増やしていく時期です。

この「運動の引き出し」が多ければ多いほど、即座の習得は可能になりますから、この時期までに様々な動きを体験させてあげることが、ゴールデンエイジを有効に活用できるカギとなってきます。



ポストゴールデンエイジ
13~14歳頃

ゴールデンエイジ後のこの時期は、急激に背が伸び、筋肉や持久力も発達するとき。
これまで、筋力、持久力が足りないことで出来なかった動きも出来るようになってきます。

反面、急に背が伸びるなど心身ともにアンバランスな時期。
感覚が狂い、これまで出来きた技術が一時的にできなくなったり、上達に時間がかかるといった現象が起きてくることもありますが、ゴールデンエイジで習得した技は忘れません。

伸び悩んでいるなと思うときは、バランスが整うまで焦らずじっくり、今出来る技術を安定させることに重点をおくのがよさそうです。

「10歳の壁(小4の壁)」授業についていけない

小学校3~4年生以降になると背の高い子低い子など発達の差がひらきはじめます。

学習面でも、学習内容の高度化により、授業に「ついていける子」「いけない子」の差が目立ちはじめ、高学年になるにつれ学力の差が拡大していくことがあります。

この個人差が顕著になる時期を、教育現場では『10歳の壁(小4の壁)』と呼び、気を付ける時期としています。

なぜ授業についていけなくなるのか

なぜ同じ授業をうけているのに理解力に差がひらくのでしょうか?

そもそも、学校の勉強は低学年と高学年では求められる力が変わってきます。

算数では

低学年の学習では、足し算、引き算、九九のような暗記だけでも解ける問題が、高学年になると、図形問題や文章問題など読解力や思考力が問われる学習へと変わっていきます。

国語では

話し言葉中心の学びから、抽象的な概念の理解が必要とされる読解問題や作文など書き言葉中心の学習に変化します。

上記の通り、高学年の勉強についていくために求められる力は「抽象的概念の理解」です。

この抽象的概念の理解の進み方には個人差があります。
そのため、現時点での「抽象的概念の理解」の度合で、授業に「ついていける子」「いけない子」の差が出てきてしまうんです

では、そもそも抽象的概念ってどんなことでしょうか。

「抽象的な概念」とは?

 具体的、抽象的と言われてもピンとこない方のために、「抽象的概念」を極簡単な事例でご説明します。

例えば、「通学班で学校に行く」具体的です。

 
これを抽象化してみると…

「みんなでいくやつ」
「ならんであるくやつ」
「たまにママがついてくるやつ」
「1年生を高学年がはさんでいくやつ」
など…

さらに、この抽象化されたものの「共通項」を見つけ、一般化することで抽象的概念となります。

この場合の抽象的概念は

「みんなが安全に学校に行くために出来ること」
とも言えるかもしれませんね。

※どう「抽象化」するか、どんな「抽象的概念」を持つかは一人ひとり異なります。

授業についていけない!のは「前頭前野」のしわざ?

この抽象的概念の獲得には、大脳新皮質の「前頭前野」の発達が深く関わってきます。


Active Brain CLUBより

  「前頭前野」は、「考える」「記憶する」「アイデアを出す」「感情をコントロールする」「判断する」「応用する」など、人が人間らしく生きるために必要な高度な機能を担っており、「前頭前野」の発達こそが、抽象的概念の獲得を促してくれるんです。

 上記の例は”登校班”でしたが、数字や漢字自体がすでに抽象化されたものであることを考えると。

「なぜ分からないの!」

と叱りつけて公式ばかり無理やり覚えさせるより、「抽象化はまだ難しいんだな」「成長のタイミングは人それぞれなんだ」と思い、身近な例を交えて具体的に説明したほうが子どもの理解は進むでしょう。

また、「前頭前野」は脳の中でもっとも発達が遅く、30歳ごろまで神経回路を組み換えながら発達します

今は周りの子と差があったとしても、いずれ同じように「前頭前野」は発達し抽象的概念、論理的な思考を身につけていくものです。

「十で神童十五で才子二十過ぎれば只の人」

ということわざがあるように、今出来る出来ないにこだわってもあまり意味はありません。
それより、子どもがその力を身につけるまで、少なくとも勉強が嫌いになるような教え方は避けたいものです。

9歳ごろから子どもの道徳観は変わっていく

 スイスの心理学者ピアジェによると、子どもの道徳観には2つの発達段階があると言っています。

  • 他律的道徳観(5~9歳ごろ)

    物事の良し悪しを判断するとき、親や先生などの大人が承認するか否かが重要。
    大人(親や先生)が言ったルールは絶対に守らなければならず、ルールを破ると厳しい罰を受けなければならない、それらは絶対に変えられないものだと思っています。

  • 自律的道徳観(9、10歳ごろ~)
    自分自身のなかにあるルールに左右されるようになる
    絶対的な善悪は存在しないことを理解し、他人の意図や状況も考慮に入れながらルールや道義的責任、罰などについて判断しはじめる。


    この二つの道徳観の違いを例で例で考えてみると

    例えば…

    「親が掃除するのを手伝おうと思い、洗剤を大量にこぼしてしまったAちゃんと、洗剤で遊んでいたら少しだけこぼしてしまったBちゃんがいるとします」

    他律的道徳観の段階にいる子どもに、どちらがより悪いか尋ねると、「Aちゃんが悪い」と答えるのです。

    これが、自律的道徳観を持ちはめる9、10歳ごろになると

    「遊んでこぼしたBちゃんも悪い」

     と考えられるようになります。 

9,10歳以降では、道徳観が大人に近づいているのが分かります。

また、他律的道徳観から自律的道徳観へ変化する時期は、前頭前野の発達やこれまで育った環境などの要因で個人差があります。

お子さんがまだ他律的道徳観の段階だと感じた時は

「もう高学年でしょ!人の気持ちも考えなさい!」

と叱るよりも、お子さんの話を聞き、必要があれば「お友達はこんな風に思っているかもね」など、相手の気持ちや状況を話してあげると、子どもが自律的道徳観を獲得するのを後押しできます。

 

9歳~12歳の社会的発達

この頃の子ども達は「親といるのを見られるのを嫌う」「やたら反抗的な態度をとる」「嘘をつく」「学校などでの出来事を話さない」などの行動が目立つようにもなり、友達関係にも変化が出てきます。

これまでは帰り道がいっしょだから、一緒の保育園だったからという理由でなんとなく遊んでいたものが、自分で遊びたい友達と遊ぶようになり、仲間を作り集団で行動をすることが増えてきます。

社会性の基礎を身につけるギャングエイジ期

家族より友達の存在が大きくなるこの時期はギャングエイジと呼ばれています。

クラスなどで、自分の趣向の合う特定の仲間たちと集団をつくり一緒に行動することが増えてきます。

ともに遊ぶ楽しさを感じる時もあれば、嫌だと思いながら同調すること、集団同士の争いが起こることもあるでしょう。

でも、子ども達はそこから、集団の中での役割や責任、ルールを守ることの大切さ、競争や対立で育む精神、自己主張の方法や対人関係の築き方など、将来の社会生活に必要なさまざまなスキルや知識を得ていきます。


大人にとっては扱いに困るギャングエイジですが、子ども達にとっては、親からの自立と社会性を身につけはじめるファーストステップ。
将来、自立した社会人になるためには必要な時期だと理解出来ると、親も今より余裕をもって見守ることができるのではないでしょうか。

なにより、親を困らせる子どもの行動は、前頭前野の発達、子どもの成長とともに治まってくるものです。

自尊心・自己評価が上がる子、下がる子

 相手の立場になって考えることを「他者意識」といいます。

10歳ごろになると「他者意識」が発達し相手の視点にたってものを考えようとする姿勢がみえてきます。

また、「他者意識」の芽生えと共に、「他人との比較を通じて自分を認識する」ようにもなってきます。

「あの子の方が頭いい」「僕の方が足が速い」「あの子はいつも同じ服を着てくる」「わたしは先生に好かれている」など…


こうして自分の「出来ること」「出来ないこと」がはっきり分かってくることで、自身の自己評価が上がる子もいれば、自己評価や自尊心を低下させてしまう子も出てきます。

自尊心とは

他人からの評価ではなく、自分が自分をどう思うか、感じるかを大切に出来ること。

もし、子どもが他者との比較で自己評価を下げているときに頭ごなしに叱ったりすると、さらなるネガティブな感情を子どもに引き起こし、余計自尊心を下げてしまいます。

人は自尊心が低下すると、気に入らない相手を無視したり、その人について悪いうわさを流したりといった「関係性攻撃」につながりやすくなります。

うちの子自己評価が低くなっているのかな…と思ったら、頭ごなしに言うのではなく、まずは自尊心を回復させてあげたいものです。


最後に、子どもの自尊心を作る三つの経験をご紹介します。

「そのままの自分を認められた経験」
「励まされた経験」
「自分で選択したという経験」

ぜひご家庭でも、毎日の生活の中でこんな体験につながるような接し方を意識してみてはいかがでしょうか。

  • この記事を書いた人

生駒 章子

親の学校プロジェクトの代表。元ガミガミママで今は親教育の専門家。
自身の原体験から、子育て支援ではなく「親支援」にこだわって活動中。趣味は読書(マンガ)

ファミリーワークス合同会社の代表。
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